なんとかなるかな
日本に着いて明日で3週間になる。
これまでの滞在の仕方なら今頃アメリカに帰る頃で、気忙しくしていることだろうが、今回は中期滞在なのでそれがない。訪問よりも生活するモードなので、ある程度根を下ろすべく、毎日いろんな手配をしている。アマゾンと無印、ネットスーパーよ、ありがとう。
しかし何もかもが普段の生活と違う。暑い。とにかく暑い。そしてコロナ流行り過ぎ。最低限の買い物と散歩以外はほぼどこにも行ってない。アメリカと時差もあるし、ちょっと孤独を感じるときもある。
それでもなんとか慣れようと、いろいろ試みる。
朝夕気温がほんの少し低いときに近所の遊歩道を散歩する。風が気持ちいい。
外に行くときは帽子と首に巻くアイスノンを忘れない。もう見た目なんかどうでもいい、倒れたら元も子もない。
あまり暑いときはアイスバーも食べるが、しょっちゅうだと具合悪くなることがわかったので気をつけながら食べる。脂っこいものもなるべく避ける。
夜中、エアコンを冷たくしすぎると調子が崩れるので弱めにしておくが、やはり寝苦しくて何度も起きる。だから日中はこまめに横になったり短い時間でも目をつぶる。
夜中に不安感に襲われるときはうちから持ってきたベイビーちゃんの遺品であるおもちゃのケーキを抱きしめて寝る(たまにつぶして「ピュー!」って中のスクイーカーが鳴ってびっくりする)。
寝がけに日本のラジオをつけるとホワイトノイズ効果なのか眠りにつくことが少し容易になるとわかった。本は面白すぎると眠りを妨げるのでほどほどに。
洗濯は朝早くに済ましておく。洗い物もこまめにする。ゴミ出しのために毎朝早起きする。排水溝やゴミ箱には常に細心の注意を払う。海を超えた自宅でいかに「雑な」生活をしていたかを思い知らされる。湿気があるというだけで生活様式はがらりと変わるのだ。
夫が言った「日本に行くのは、楽するためじゃないでしょ。一番の目的があるからでしょ」という言葉を思い出す。そう、わたしは母ともっと時間を過ごしたくてここに来たのだった。
だから毎日ほんの少しずつ、日本に、母のいる日本に、馴染めるように試行錯誤を繰り返す。
気持ちが慣れるようにとつけ始めたラジオから、1990年代前半の日本の音楽が流れてくる。わたしがぎりぎり覚えているものだ。わたしの覚えているあの頃の日本は、今はあまり残っていないようにも思えるのだけれど、当時聞いたことのある音楽が流れてくると、「あなたの覚えているものごとのかけらは、まだ残っているよ、まったくの異国に来たのではないよ」としばらく会っていなかった知り合いに慰められているような気もしてくる。
後から考えたらわかることが今わからないからといって、自分を責めるのはやめよう。大事なことのために、とりあえずえいやっと未知の中へと飛び込んだ自分をほめてあげよう。そういうことに突き動かされることも、時には大事なのだ。
ぼんやりと「なんとかなるかな」と思いながら、楽天から届いたばかりの物干し竿を竿受けに引っ掛けた。