きょうはくかんねん

だれもわたしのことを止めてはいないし

なにかに追われているわけでもない

なにをしても文句をいう人はいないし

いこうと思えばどこにでもいける(*コロナ制限あり)

 

しかしわたしはとどまる

湖面にゆらゆら浮かぶ空箱のように

運良く宙に浮かんだ紙飛行機のように

地面におかれた古い電車のように

 

すすむ先もわからないのに

こぎだす力もみあたらないのに

どこかへいかなきゃいけないような

走り出さなきゃいけないような

 

うっすらとした強迫観念から顔をそむけ

わたしは刻む、にんじんを

わたしは煮付ける、おさかなを

そしていそがしかったふりをする

 

ねえわたしのなかのだれかさん

どうしてわたしは「いる」だけじゃだめなの?