ミシンとの馴れ初め

3月にロックダウンに入ってから結構な数のマスクを縫った。こっちの人たちはマスクに慣れてないので、せめておもしろい柄のマスクでハードルが少しでも下がればと思い、いろんな柄の布を使い、形も何度も改良し、縫いやすい、効果的、使いやすい、を兼ね備えたデザインのプリーツマスクに落ち着いた。

くまモンマスク

くまモンのハンカチで作ったマスク


15年くらい前から使っているミシンを使って縫っていたのだが、久々に引っ張り出した時は難儀した。少し前に使った時は下糸が絡みまくり何度やってもうまくいかず、それ以来億劫で縫いたいものがあってもミシンはしまったままだった。しかし今回はそんなこと言っている訳にもいかず、一念発起してミシン問題と向き合うことにした。

 

検索してみると、何をするにも糸調子が一番大切、そのためには糸のかけ方をしっかりと確認すること、などなど、役立つヒントがいっぱいあった。短期間にいろいろ学びおさらいし、とりあえずマスク作りに没頭する生活が始まった。SNSとかに作ったものの写真を載せていたら、そのうち教えてほしいという人たちも出てきて、知る限りのことはシェアさせてもらった。まだまだ未熟者だし、なんか申し訳ない気もしたけど、こういうご時世そんな遠慮などしていられない。

 

私とミシンの馴れ初めは、とても理想的とは言えなかった。小学校5年の時だったか、家庭科の授業でミシンの使い方を習ったのだけれど、これが足踏みミシンだった。私はこれをどうしてもきちんと回すことができず、結局最後まで縫えなかったのはクラスで私一人だった。できない私に先生もイライラしたのか、クラスのみんなが見ている前で私にミシンを回させ、緊張した私は硬直してますますできない、という悪循環に陥った。少なくとも私の記憶ではそういうことになっている。

 

 

それまでも学校で先生たちによる「公開処刑」みたいなのは何回か受けていて、その度に学校が怖くなった。子どもを辱めたり脅したりしたところで、できるようにはならないんだけどね。子どもでも大人でも、緊張すると、できることもできなくなっちゃうじゃん。

 

中学、高校になり、電動ミシン(ホッ・・・)を使った授業では、パジャマやブラウスを作った。もともとものを作るのが好きな私は、案外楽しくなって、それ以降自分でも簡単な服を作ったりした。父が我流ながらも縫い物が上手で自分で服を直したりしていたので、それを見て私も自然と抵抗がなくなっていったのかもしれない。

 

大人になって、会社でみんなと働いたり、人の前に出たりといろいろやってるうちに、緊張しやすい場面でも、息を整えて目の前にあることに気持ちを集中させれば、大抵の不具合は乗り越えられるし、人の目というのは実は核心にあるものではない、ということを学んだ。今回の下糸が絡むミシンの不具合も、息を吸って、吐いて、ググって、を繰り返したら、案外苦なく乗り越えられた。クラスのみんなが見ているわけじゃないし、見ていたところでどうってことはない。ひたすら目の前にあることをやれば、多くの場合、道は開ける。

 

ところで件の15年もののミシンは、音と振動がものすごいし、布に針が刺さらないし、どうも使い勝手がおかしいなと思っていたら、先月とうとう縫えなくなってしまった。それだけマスクをたくさん縫ったということか。私のようなマスク制作人口も昨今は激増し、ミシンが入手困難なので困ったなあ、と思っていたら、たまたま近所のキルトショップで私の第一希望のミシンが入ってくるというので、予約をして一ヶ月ほど待った。そしてやっと届いたミシンは、まあなんと縫いやすいこと。ハイエンドではないけれど、手の混んだことをする予定もないので、十分すぎるくらいだ。本当に楽々と縫えて、ますますマスク作りや縫い物が楽しくなった。

新しいミシン

新しく届いたミシンは、なんと縫いやすいこと。

 

ミシンとの理想的とは言えない出会いから、糸調子問題など様々な難関を乗り越え(大げさ)、今では使うのが楽しいと言えるまでになったミシン。振り返ってみると感慨深いなあ。

 

ミシンよ、これからもよろしく。